無題

「色白で家から出なそう、運動もしなさそうなのに。意外。」

 

と笑われるけれど、私は四季の中で一番夏が好きだ。

 

夏の空気は1日の間で気まぐれに変わる。

少し湿気た、べたついた暑さの朝。

カラッと太陽が笑い、蝉も踊る、昼。

少し肌寒く、せつない夕方。

すずしく丁度良い、街灯の似合う夜。

どれも私は大好きだ。

 

夏を過ごしている途中はとても長く感じるけれど、終わるととても短く感じるのが寂しい。

気まぐれで気分屋な夏が、今年も来た。

無題

 

「愛は妬まず、誇らず、驕らず、」

聖書にそう書かれていたのを思い出した。

神様から見たわたしの気持ちは、きっと愛ではないんだと思った。

 

言葉は陳腐だ。

「好き」なんて言葉を言われ慣れている、貴方に何と言ったら喜んでもらえたのだろうか。

でも、「好き」以外の「好き」に代わる言葉なんてきっとないから、私はこれからも「好き」と言うのだろう。

 

今、誰といて、誰のことを考えてる?

貴方は私のことを知らないままで、幸せになっていく。

私が貴方のことを考えて、服を選んでいる時も、だ。

無題

今日は朝から大雨で、放課後はわざわざ友達に会うという約束を取り付けたにもかかわらず、私は朝から苛立っていた。

湿気で髪の毛はまとまらないし、化粧もなぜか上手くいかなくて、ギリギリで飛び乗った電車も雨の影響で遅延した。

 

電車に揺られながら、全てがバカバカしくなった私は、駅に到着し、高校と真逆の方向へ歩いて行った。

 

ランドマークプラザの4階は、わたしと杖をついているおじいさんしかいなかった。おじいさんはよく眠っており、私も真似してベンチで寝てみようとしたが、首が痛くなったのでスターバックスに移動しよう、と思った。

 

今日は靴紐がよくほどける。

スターバックスに着いた途端、私はメニューもろくに見ず、到底飲みきれないサイズのチャイティーラテを頼んだ。


なんだか自分の人生を見ているようで苦しくなっている。今も暖かいラテを飲んでいるのに、上着を脱ぎ半袖になっているし。

無題

 

朝とも夜とも言い難いこの3時4時の間の1時間は、街も家もインターネットも静かで、ただ時間の波が通り過ぎるのを感じられる、とてもいい時間だ。

 

2ヶ月ぶりに、貴方の声を聞いた。

スピーカー越しのスピーカー越し、なんともややこしいけれど、少しくぐもった声が懐かしくて、今すぐにでもあなたに会いに電車に飛び乗りたかった。

 

短気だった貴方が、突然電話がかかって来ても全く怒らなくなっていた。貴方が「いいよ」と褒めてくれた黒の襟のついたワンピースも、久々に袖を通すと丈が短くなっていてそこには違和感しかなかった。

 

時間はずっと川のように流れていく。絶対に待ってはくれないし、過去には縋れない。岩にしがみついたところでたかが知れている。だから焦らないで、流れに身を任せてゆらゆらと浮かぶことはきっと、ずっと迷って行ったり来たりしている、この迷路の近道なのかもしれない。

 

無題

 

自分が女の子である自信を失くした時、私はいつも自分をたっぷりと甘やかしてやることにしている。


昨日は鏡に映る自分の醜さに朝から号泣してしまったから、夜は風呂場で化粧品ブランドの試供品の特別なトリートメントをした。


風が吹くたび甘い女の子みたいな香りがしてすこしくすぐったい、この感覚がかなり好きだったりする。香水も然り。
まつ毛をくるんとさせて、唇もピンクにしてあげた。そうすると何故かちょっと楽しくなれるから不思議だ。


自分が女の子でいていいのか、よく悩んでしまう。
私はか弱くないし、1人で自分の身を守れてしまうから。スカートも慣れなくてむずむずするから膝から下のものしか履けないし、何より私より背が低い男の人が結構いるのだ。私が守ってやらなきゃいけないのかもしれないのでは、と度々思う。不器用で人の懐にも入れない。


でもきっと、女の子でいちゃだめな女の子はいないんだと思う。女の子って響きがまずかわいいから大丈夫。


この世界は厳しくって、華奢でかわいくなければ生きる資格がないと思いがちになってしまうけど、女の子は生きてるだけでかわいいから大丈夫だと思う。世間が許さなくても私が許す。


だから明日もまつ毛を上げて、口紅を塗るんだ。

負けるな。