無題

 

英語の授業を受けている時、教室にはいない彼のことをひたすら考えていた。

そこにはいない人の生活を考えるのが好きだ。

今日は何を食べて、何を着て、何の本を読んでいるのか。頭の中で別人の彼を勝手に作る、なんとも愚かで惨めな楽しい行為だ。

 

帰りに美術館に寄る道中、化粧室で口紅を塗った。

作品を見るという事は、そこに飾られている作者の魂と対峙するという事だと思っている。だから私はその時に出来る最低限の正装をしよう、と決めているのだ。

面倒な女だ。自分でも分かっている。